学力と非認知能力

4月から尼崎市の「学びと育ち研究所」の副所長を務めているのだが、教育に関する研究で多いのは、やはり学力に関する研究である。学力はテストなどを行えば、比較的数値化しやすいので、研究材料としては使いやすい。ただ、最近の研究では学力よりも、その子どものやり抜く力(GRIT)や粘り強さ、我慢強さなどの「非認知スキル」というものが、将来の学歴や収入などに大きな影響を与えていることが明らかになっている。
例えばアメリカではわが国の高卒認定試験のようなGeneral Educational Developmen(GED)という試験が行われている。この試験に合格すれば、高校を卒業していなくても、高校卒業と同等の学力があると認定され、大学への受験資格も得られることになる。その後、大学の入学試験に合格すれば、大学に入学することになるが、高校を卒業して大学に入学した学生とGEDに合格して大学に入学した学生とでは、大学の中退率に大きな違いがあることが明らかになっている。もちろん、GEDは何らかの要因によって高校を卒業できなかった人を対象に行っている試験なので、その合格者には精神的な側面も含めて、何らかの事情がある可能性も高いが、それだけではなく、そこには「非認知スキル」の差異があると主張する研究者も多い。
「非認知スキル」は一般に幼少期に培われるものであると言われており、その形成が概ね8歳程度までに行われると考えられている。そして、その非認知スキルを高めるための訓練はいわゆる教科学習のような学力トレーニングではなく、日々の生活や体験の中で行われると言われている。そう考えると、ブレヒューが行っているような体験活動が、子どもの将来にとって、学力向上以上の意味を持っているといえる。子どもの将来に対して、我々はとても大きな影響と責任を持っている。そのことを自覚しながら、日々の活動を続けていきたいと思う。(のじま)