電車とキャリーケースと強盗
谷町線
大阪で有名な紫の路線である。
先日、谷町線に乗っていた。
座席に座りたかったが、昼過ぎの時間帯は込み合っていて、扉の横の手すりの近くに立っていた。
スマホを眺めながら目的の駅まで時間をつぶしていた。
たまたま、私が立っているほうがホーム側となり1人のご婦人が乗車してきた。
そのご婦人は大きめの荷物を入れる布製のキャリーケースを引きながら電車を待っていた。
私は荷物大きいなと思いながら、スマホに目を落とした。
しかし、扉が開いて、乗り込んできてから私の前でご婦人がなんだか慌てふためいていた。
先にご乗車されていたご主人と思しき方は特に気が付く様子もなく奥に歩いていく。
よく見るとキャリーケースのタイヤが電車とホームの間に挟まっている。
これはやばいと思い、キャリーバックに手をかけ、少し強引に引き抜いた。
ご婦人も必死でキャリーバックに手をかけ力を入れて引っ張っていた。
なんとか無事にキャリーバックを引き抜き、列車の遅延を防いだと思った。
ご婦人も安心して奥のご主人のところに向かっていった。
すると、ご主人の様子が少し変だ。
なにか盗られたのか?なにがあったのか?大丈夫か?的なことを聞いていた。
どうやら私がご婦人のキャリーケースを力いっぱい奪い、ご婦人がそれに抵抗している絵に見えたらしい。
なるほど。客観的にみるとそういう風にも見えるのかと感心しながらなんだか少し気まずい感じになってきた。
ご婦人はキャリーケースが引っ掛かったと説明してくれているようだが、ご婦人を心配するご主人からすると私は確かにただの強盗に見えたのかもしれない。
ものの見方はなかなかおもしろい。
松本