夢を売る仕事

ある日熊さんは言った。「お前に夢はあるのか?」

僕は思った。いきなり何を言い出すのかと。第一少し前までは、そんな話になると「夢や希望で飯は食えない。」と言い張っていたではないか。だが、もちろんそんなことは言えず、「社長にはあるのですか?」と質問を質問で返して見た。

通常なら「質問に答えろ!」と激怒されるのだが、今日は機嫌が良かったのか、丁寧に答えてくれた。「俺には夢がある。しかも俺が夢を語れば、周りの人はそれを信じるんだよ。」

宗教の話なのだろうか。その後、壷やらなんやら買わされるのではないかと思ったが、それ以上にこのままエンドレスに話をされる方が何十倍も怖くて、適当に(正確には適切に)相槌を打って、その場を凌いだ。

ただ、その日に帰り道に、熊さんがいう「お前には夢があるのか?」という言葉がなぜか蘇ってきて、一人考えさせられた。

少なくとも社会人になる前の学生の時なら速答で「YES」と答えれたはずなのに、今は、その言葉を返す言葉が見つからなかった。たぶん「YES」と答えれば嘘だし、「NO」と答えればそれも嘘になる。「YES」と「NO」の狭間にあるものを探しながら、家に帰った。
それから数日が経っても答えは見つかっていないのだが、なんとなく、学生の時になりたくないと思っていた社会人像に、今自分がなっているのではないかと怖くなってしまった。

自分の夢や希望はまだよく分からないが、BHの職員は夢を売る仕事のような気がしている。
BHの職員は、大学1回生からすれば、おそらく初めて出会う社会人だと思う。そんな人が毎日しんどそうに仕事をしていれば、彼らの未来もなんだか暗くなるのではないのだろうか。自分たちの働く姿を見て、「はやく社会人になりたいな」とそう思ってもらえることが、結構重要なことのように考えたりもしている。まだまだよく分からないのだが、いずれ速答で「YES」と答えれれるように今は模索しながら日々を過ごしてみようと思う。今週は、そんなことを考えて、やっぱりまだまだ仕事できてないなと猛省した1週間だった。

ふと横を見ると社長のおなかには沢山の"希望"があるのに、、、

(片岡)