とある新幹線の極上のサービス

C席

私が新幹線で割り当てられた席です。
19時過ぎの新幹線内はとても込み合っており、夕食時ということもあるのか隣に乗っていたご夫婦も
アルコールを飲みながらカレーを食べておりました。

私も新幹線といえばビールと駅弁という安易な発想から駅で崎陽軒のシュウマイ弁当とビールを買い込み、
新幹線でご機嫌にご飯を食べていました。

その日は最強の寒波が到来しており、新幹線もかなり遅れていました。
長旅となり疲れてる人が多いのか徐々に周囲の人たちは寝静まっていきました。
私の席も隣のご夫婦が眠りにつき、私はご機嫌に本を読んでいました。

「ごとッ」

隣で突然そんな音が聞こえました。
どうやら寝返りもどきを打つときにA席のご婦人がチューハイをこぼしてしまったようです。
不幸にもチューハイの中身はたんまりと入っており、新幹線も曲がっていたのか左から右に
液体がこぼれていきます。

もちろんティッシュなど持っていない私には手も足も出ない状況
まず、自分の荷物を地面から椅子の上に移動させ立ち上げりました。
しかしティッシュもない、タオルもない私はなすすべもなくおろおろしてました。

すると右斜め前に座っていたご婦人が「駅員さんを呼んでくる!」と言って立ち上げり足早に別の車両へ消えていきました。
隣のご夫婦は手持ちのポケットティッシュで地面を拭いていましたが焼け石に水
大量の水にティッシュが吸い取られていきます。

私はというと謝るご夫婦に「気にしないでください。」といいつつ、なすすべがないので立ち往生

するとそこに救世主が現れたのです。
乗務員さんは大量のペーパータオルを持ち、すぐさまチューハイの洪水に向かってペーパーを大量投下
私もついに出番だと思いペーパーで地面を拭いていると、なんと乗務員さんが四つん這いになり、四方八方に流れたチューハイを拭きとるではないですか

え?あなた制服ですよ・・・と思い、しかも今日雪の遅延で疲れてるでしょ・・・と思ったものの、
そんな様子は全く見せずこぼれた液体とお客さんの心配をする乗務員さん

この人はプロだ・・・
過剰なサービスなのかもしれない
でも、ここまでのプロ意識でこんなきめ細かいサービスを受けてしまうと新幹線のファンになってしまう。

よく清掃員さんの様子がTVで放送されているが、当然ながら乗務員さんもそのレベルのサービスマンなのだ
そのあと何食わぬ顔で切符の確認に戻ってきた。

日本という国がサービスにとても優れているという話を聞いて疑わないのは、
我々日本人1人1人がそういうサービスに日々触れているからなのだろう。

私も同じサービス業をしている端くれとして、ファンとなってもらえるサービスができるようにがんばろうと思った出来事でした。

松本