メンタルをつくる

ワールドカップ最終予選で日本を応援している中、国や日の丸を背負ってプレーするというのは、どんな感じなんだろうとふと思った。

PKなんかは、どういう気持ちで蹴ってるんだろう。外して負けたときには次の日の朝刊は、各紙一面でバッシングされるのは間違いない。そんな責任を持ちながら果たして蹴れるのだろうか。自分なら絶対にキッカーに名乗り出たりはしたくない。

ブレヒューでは、自分のことをメンタルは強い方だと言ってもらえることはあるが、能島さんや章雅さんみたいな超人なメンタルは持っていないし、松本さんや福井くんみたいな超ポジティブメンタルでもない。端からみれば強いように見えるかもしれないが、基本的にはネガティブだし、悩んだり病んだりすることももちろんある。普通なんだと自分では思っている。正しく言えば、メンタルを一定に保つことが出来るように作っているとなるのかもしれない。

そういう風にするようになったのは、おそらくサッカーをしてきた経験が大きいと思う。特に高校時代に起因している。

自分はどこにでもある普通の公立高校でサッカー部に入った。小学生の時からずっとサッカーをやってきたが、私立高校にスカウトされたりとかするわけでもなく、どこにでもいるサッカー好きな青年だった。高校も文武両道と謳っていたが、中の上くらいの成績だったと思う。

そんな高校で1年生のとき、なぜかレギュラーに選ばれることになった。確かに真面目に練習は出ていたし、初心者に比べればそれなりに出来たかもしれないが、先輩はもちろん、同期にももっと上手い人はたくさんいた。正直意外だった。
監督はほぼ何もしゃべらない人だったので、なぜ自分を選んだのか真相は分からないが、そこから地獄は始まった。

練習でも試合でも当然、自分が下手な訳で、ミスをするのも当然自分だし、試合で失点するのも劇的なピンチを招くのもいつも自分が原因だった。その都度、先輩たちが走り回ってミスを帳消しにしてくれていた。
幸いにも周りに、悪口を言う人はいなかったが、ここまでチームの役に立ってない人間が試合に出続けていいのだろうかと疑心暗鬼の日々だった。ただでさえ下手なのに調子が悪い日には早く代えてほしいなとばかり考えていた。

自分が出したパスが誰からも追いかけられることもなく、ただ転がっているボールを眺めるのは結構ダメージをくらった。
また、先生やサッカー部以外の友達から「1年から試合に出られてすごいな」なんて言われると言い返す言葉がなかった。

そんな感じで半年続けて、3年生の最後の大会が始まった。自分の感情とは裏腹に、神戸市予選を勝ち抜き、本線も一回戦二回戦と勝ち進んだ。私立の強豪校や翌年兵庫県の新人戦を制する高校にも勝ち、僅差の試合ばっかりだったが、ベスト16まで這い上がった。
ただ、試合の前日、自分がやらかしたヘマで放課後呼び出しをくらい、部活に参加できなかいというちょっとした事件を起こしてしまった。その場で監督からは、「明日はお前は使わん」と宣告され、初めてレギュラーからはずされた。悪いことをしたなという感情はあったけど、正直その時は何も思っていなかった。

対戦相手はシード校で、勝てる見込みがかなり薄い。そんな中、試合が始まった。初めて外からみる景色は、いつもとは違っていた。自分の代わりに入った人は本当に周りとフィットしていたし、パスも自分がいるときよりも格段繋がっていた。自分の存在をここまで否定されながらみた試合は過去を思い返してもこの一度だけだと思う。試合はその人の活躍もあり、1-0で勝利できたが、試合終了と同時に「もう自分が試合に出ることはないな」とある意味自分の中で、納得した気持ちでベンチに座っていた。

すると、3年生の先輩が真っ先に自分の所に来て、「お前のために勝ってやってんからな。次は頼むぞ!」と肩を組んで来てくれた。正直嬉しかった。3年生が自分のことをそこまで気にしてくれていたなんて思ってもいなかったし、3年生の引退をかけた試合で、3年生にそんなことまで気にかけさせ、そんな時も自分のことばかり考えている自分が情けなかった。

そっからは吹っ切れた。まずはレギュラーを取り戻すために、監督に猛アピールした。もう一回先輩達と試合がしたいというその想いだけだった。自分がミスしたらどうしようとか、迷惑ばっかりかけているとかそんなことばっかりを考えるのはやめにして、無心で取り組んだ。試合の結果は1-4の敗戦だった。4強シードはとてつもなく強かった。ただ、猛アピールの甲斐があったからか、再びレギュラーに戻れて、試合にも出ることができた。3年生は最後に「自分たちをここまで連れてきてくれて、ありがとう」とみんなに言った。試合には負けたし、当然自分が大した活躍が出来た訳ではなかったけど、試合に負けて、納得した気持ちで帰れたのも過去にもこの一度だけだと思う。

そこから卒業するまで、小さいことやネガティブなことを試合まで持ち込まないように、自分の気持ちを調整していく様になった。もちろん考えないと言うことではない。「負けたらどうしよう」とか「ミスしたらどうしよう」とかそういう感情はもちろんある。先輩になれば、後輩とどう接するのか毎日の様に悩んだ。でもちゃんと自分の中で整理して、人前には立とうと心がけた。試合に対してのプレッシャーは極限まで追い込んで、逆に励みにしてきた。そうやってメンタルを自分の中で処理してきたつもりだ。(うまくできているのかは分からないが)

これは仕事になっても同じだった。今も朝起きれば、「今日もだるいな」「しんどい」「あれやらないとやばいな」とかいろんな事を考えしまうし、布団から出られず、吐き気がすることもある。高校時代よりも多くの責任があるのだから、高校時代よりもその辛さは大きいのかもしれない。でもそこで逃げない様に毎朝戦っている。自分は毎朝7時に起きて、自分の時間を作るようにしている。音楽聞いたり、本読んだり、リラックスし、ネガティブなことについては、自問自答しながら、「やるしかない!」という気持ちを奮い立たせている。

今の大学生も同じなんじゃないのかなと思う。逃げたくなるようなこともたくさんあるし、しんどいと思うことも日常茶飯事だと思う。思い通りにならないことももちろんある。でもだからそこでほっぽりだすんじゃなくて、試行錯誤しながらでもいいから、一歩踏ん張ってみて欲しい。そういう心の上げ下げが今後きっと役に立つ時がくるから。もちろんしんどいきはしんどいと言ってもいい。自分の高校時代の先輩もそうだったが、そうやって悩みながらでも挑戦していることは、きっと誰かが見てくれているから。時間がかかってもいいので、最後までやり抜く力、色々な困難を乗り越えるメンタルを身につけてほしいと思う。

(片岡)