Chance for Childrenはなぜ凄いのか

【Chance for Childrenがなぜ凄いのか】
 阪神・淡路大震災以降、16年以上にわたりNPOで活動をしてきたが、正直なところChance for Children以上によくできた仕組みに出会ったことはない。(当社比)

■子どもたちの学びと事業者の自立を両立させる
 何が一番凄いかと言えば、子どもたちの学びを支えることと教育事業者の自立を両立させていることだと思う。いまCFCは東日本大震災の被災地で活動を行っているが、被災地では学校などが被災したこともあり、子どもの学びに対する不安が大きくなっている。現在、CFCでは塾や予備校、習い事などの学校外教育機関で利用できるクーポンの受給を希望する子どもたちの募集を行っているが、このところ事務所の電話は鳴り止まないという。電話口からはどれも切実な状況が伝えられる。

■無償サービスの功罪
 確かに被災地の子どもたちの学びを支えるのであれば、ボランティアなどで無償で学習支援することも考えられる。16年前、私たちもボランティアで家庭教師を行うことで子どもたちを支えようとしてきた。

 しかし、震災からある程度の時期が経過すれば、地元にある教育事業者も復興しつつある。そんな状況のなかで、いつまでも無償で教育支援を行うことはその自立を妨げることにもつながる。数ヶ月前、やっと再建を果たした食堂の近くで炊き出しをしているという話があった。まさしくこれと同じ構図が生まれる。

 災害初期においては無償のサービスや物資の提供は不可欠だが、被災地が自立的な歩みを始めようとしている段階では、それらの無償サービスは、その地域のマーケットを破壊することにもつながる。

 何でもかんでも市場原理に委ねるという考え方は資本主義のひずみを拡大する懸念があるが、一方でマーケットを崩壊させてしまえば、健全な市場原理すらもなくなってしまう。健全な市場原理とは、消費者が事業提供者のサービスのクオリティとその価格を比較して合理的な判断のもとに事業者を選択するという機能だ。この機能が失われれば、事業者はそのクオリティの向上への歩みを止めてしまうことになる。無償サービスは価格の面において絶対的な優位性を持つことから、そのクオリティに対する進化が遅れがちとなる。結果として、質の低い教育サービスが持続され、健全な教育事業者がその地域から駆逐されるということになる。

■市場原理の維持と子どもたちの学び
 そのような状況を回避しながら、経済的、その他の理由によってそれらの学校外教育を受ける機会を失った子どもたちに対して、その学びを支える手段は、ボランティア等による無償の教育サービスの提供ではなく、地元の教育事業者が提供する教育サービスを受けるための費用を保障するすることだと思う。

 そうすれば、子どもたちは経済的な負担なく自由に教育事業者を選択することができる。それによって、教育事業者は収入を得ることができると同時に、子どもたちによる選択にさらされることにより、さらなる質の向上を目指すことになる。

 教育事業者の経済的な自立は教育の質の向上をもたらすとともに、被災地において安定継続した雇用をもたらすことにもなる。Chance for Childrenの仕組みは子どもたちの学びと教育事業者の自立を支えるとともに、被災地に雇用を生み出すことにもつながる。

■バウチャー(クーポン)という仕組み
 もっとも被災した子どもたちの学びを支えるために、現金を給付した場合、それらの資金が教育に用いられる保証はない。むしろ切実な経済状況のなかで、それらの資金は生活費や生活再建費用に充てられる可能性も否定できない。

 より確実に提供された資金が子どもたちの教育に用いられるためには、現金での給付は望ましいものではない。そこでChance for Childrenが取り入れているのがバウチャー(クーポン)の仕組みだ。子どもたちには現金給付を行うのではなく、クーポン券の提供を行う。そのクーポン券はChance for Childrenが指定した教育事業者のみで使用することができる。こうすることによって、提供されたクーポンは、教育以外のことでは使用できなくなる。つまり、提供された資金のすべてが子どもの教育にのみ用いられることになる。

 またクーポンには有効期限があるため、期限内にそれを使用しようとするインセンティブも働く。現金給付であれば貯蓄などの可能性もあるが、クーポンは貯蓄することができない。そのことによって、提供されたクーポンの多くが期限内に被災地の事業者で用いられることになる。これは被災地の教育市場に一定期間の間に確実な資金が流入するという効果を持つ。それによって被災地の教育事業者の自立がより確実に行えることにもつながっている。

■Chance for Childrenはなぜ凄いのか
 つまりCFCの仕組みは、確実に子どもの学びを支えると同時に教育事業者の自立や雇用の確保までももたらす。しかも、子どもたちに提供される教育サービスは健全な市場原理のもと、そのクオリティが保証される。こんなすばらしい仕組みはいまだかつてなかった。(当社比)

 ただ一つネックがあるとすれば、クーポンを提供する費用はすべて寄付に依っているという点でもある。多くの市民や企業の皆様からの寄付がなければこの素晴らしい仕組みは成り立たない。そのため、Chance for Childrenのスタッフは今日も東京や仙台で資金調達に営業に走っている。
 
 どうか一人でも多くの方がこの素晴らしい仕組みを支えてくださいますように。心からお願いいたします。(のじま)

Chance for Children公式サイト
http://cfc.or.jp/