プーの一声

午前6時、ゴソゴソという音に目が覚める。
振り返るとそこには
布団を強く抱きしめ丸くなる子どもの姿が。
「どうしたの?」と声をかけると
「プー」の一言。


5月末より、一斉に国内外のキャンプが立ち上がりました。8月だけで、国内10本、国外3本の実施が予定されています。また例年の如く、怒涛の日々が始まろうとしています。そんな中、ふと自分のキャンプデビュー戦を思い出しました。もうかれこれ16年前のこと。デビューは、他団体で行われた小豆島でのキャンプ。団体の長であるご夫婦が、自分たちで土地を切り開き、ロッジを建て、プライベートビーチ付きのキャンプ場を創りあげた場所。大学生になったばかりの私は、右も左も分からず、友人に連れられてこの地に降り立ち、そのまま流れに身を任せ、半月をこのビーチで過ごすことになります。
デビュー戦はすぐにやってきました。確か4泊ぐらいのキャンプだったと思います。今のBHと違うのは、5日間全くと言っていいほど、プログラムがないのです。リーダーが子どもたちと共同生活をし、自分たちで自分たちの過ごし方を決めるのです。全くリーダー経験のない私は、毎日知恵を絞り、先輩にアイデアを乞い、翌日のプログラムや子どもたちとの関わりを考えることとなりました。縦割り班のメンバーは、皆なかなか個性的で、まずグループを作っていくのにも一苦労でした。初日から、一人の子が「このリーダーは初めてやからこの程度でしょ」と言えば、もう一人の子は「リーダーは僕のことを全然分かってくれない」と泣き出し、一人は小1ですぐにフラっとすぐにどこかに行ってしまいます。1時間に一度は心が折れそうになりました。「リーダー」という役割は難しいものだと、この時以上に感じたことはありません。
さて、班の中に、5日間「プー」としか話さず帰った小3の男の子がいました。やりたいことを聞いても、トイレに行ったかを確認しても、返ってくる言葉は「プー」の一言。正直最初は戸惑いましたが、表情や動作を見てコミュニケーションをとっていると、それほど気にならなくなりました。冒頭に書いたのは、そんな彼の一幕。おねしょをしたようで、それを隠すために早朝からパンツをはき替え、濡れた布団を抱きしめていたのです。こっそりと二人で布団を干したものの、班員にバレて、またもう一幕となりました。そんな感じで長いようで短い5日間をほろ苦く終えることとなりました。余談ですが、北村家の長男ももう5歳ですが、恥じることなく、まだ堂々と紙パンツをはき、嬉しそうに人前で用を足しています。あと1年半で、キャンプに参加できる状態になるか心配している今日この頃です。
その後、彼とはBHの前身である関学学習指導会のキャンプで何度も会うこととなります。もちろん、その後は友人と楽しそうに話し、元気に活動する姿が見られました。年々成長する姿を遠目で嬉しく見ていました。そんな彼も今では、私と10歳違いの24歳。数年後に迎えるBH20周年祭ででも会えればと夢見ています。今年もキャンプに参加する子どもは数百名になるでしょう。リーダーや友人との触れ合いの中で成長し、貴重な時間を過ごせることを祈っています。(きたむら)