単位認定よりボランティア休学制度を推進する5つの理由

上記の文部科学副大臣の通知ではボランティア活動の単位認定についても言及していますが、私としては単位認定よりもボランティア休学を推進することの方が適切だと考えています。理由は下記の通りです。
(1)単位認定の厳格性
大学の単位は少なくとも大学教育にふさわしい教育内容が十分に設計され、教員が学生に適切な指導を行い、一定の習得を行った学生に対して付与されるものです。インターンシップサービスラーニングなどの領域においては現場での活動もその教育内容の重要な構成要素ですが、それらの活動に対しても教員による適切な関与が求められるべきです。したがってボランティア活動であれば、どのようなものであっても単位認定すべきだとの考えは安直であるように思います。
(2)安易な動機によるボランティア参加の抑制
ボランティア活動の単位認定はこれまでの多くの大学で行われていますが、そのなかには単位を目的にボランティア活動を行う学生が少なくありません。平時のボランティア活動においてはそのような脆弱な意思によるボランティア活動への参加も許容できる場合があるかもしれませんが、災害ボランティアについてはそのような安易な考えでの参加は厳に慎むべきであると思います。
(3)学生の覚悟
上記の記述とも関連しますが、今回の災害の被害はかつて類を見ないものであり、被災者の精神的、経済的、肉体的状況もかなり過酷なものです。そのような人々と関わろうとするボランティアについては、自らも相当の覚悟を持ち、活動を行うべきであると思います。かつての大規模災害においても支援者のPTSDなどの問題も明らかになっています。そのような状況のなかで、ボランティア自身もそのリスクを十分に理解し、覚悟をもって被災地に入ることが求められています。
(4)フルコミットの重要性
被災地で求められるボランティア活動の多くは被災者の生活支援やそれに関連する事柄です。人々の生活を支えるということは、それらの方々と日常的に接し、信頼関係を構築することが求められています。そのため、週に数時間程度のボランティアではなく、しっかりと腰を据えて、フルタイムで関わることのできるボランティアが求められています。単位認定の仕組みでは、他の科目などとの関連もあり、フルコミットすることはなかなか困難です。単位認定により週数時間程度ボランティアをするよりは、大学を休学し、十分な時間を活動に充てることの方が求められています。
(5)長期的な関わりの重要性
上記では時間的にフルコミットすることの重要性を述べましたが、期間的にも短期ではなく、より長期的な関わりをすることが求められます。少なくとも数ヶ月以上、可能であれば1年間程度、被災地で活動することが重要だと思っています。そのためには大学の科目としてではなく、大学から一定期間離れ、長期的に関わることが必要だと思います。


以上の理由から私はボランティア活動の単位認定ではなく、ボランティア活動を理由に休学する学生の休学費用を免除する仕組みが重要だと考えています。つまり、大学の教育活動の一部分としてボランティア活動を取り込むことよりは、学生の主体的な意思によるボランティア活動に対して、それを阻害しないような仕組みが必要だと思います。誤解を恐れずにいえば、大学が学生の主体的意思によるボランティア活動を邪魔しないでほしいということなのです。(能島)