「ボランティア休学制度」の導入を!

16年前に発生した阪神・淡路大震災。そこでは災害から1ヶ月の間は1日当たり約20000人のボランティアが被災地で活動していたといわれています。*1災害発生後1ヶ月以降から急速にボランティアは減り、約1年間は600人から800人程度で推移しています。またその5割以上は20代前半の大学生であると言われています。私たちも阪神・淡路大震災で被災した子ども達の支援活動を契機に始まりましたから、私たちもその数のなかに入っているのかもしれません。
今回の東北地方太平洋沖地震では、阪神・淡路大震災よりも被災地は広域にわたり、被災者の数もその数倍以上だと言われていますので、それに対応するボランティアの数も数倍以上になることが見込まれています。つまり震災から約1年にわたり、数千人規模のボランティアが被災地に常駐し、被災者の支援を行うことが求められています。もちろん、被災地内からのボランティアも見込まれますが、それだけでは到底、足りないことは明白です。
そこで活躍することが見込まれるのは間違いなく大学生です。現在、全国には256万人近くの大学生がいます。*2仮にその0.1%(つまり1000人に一人)でも被災地で活動することができれば、2500人程度になります。大学生は若く体力もあり、且つ時間的な余裕もあります。私はその大学生こそが、被災地の中長期的な復興には不可欠であると考えています。
しかし、大学生が被災地で長期的な活動を行おうとするといくつかのハードルがあります。最大のハードルは学校です。大学生ですから学校で学ぶことが第一義的に求められています。そのため、長期に渡って学校を欠席することは学生としての本分にかかわる問題でもあります。そこで私が提唱したいのは「ボランティア休学制度」の導入です。現在、大学を休学しようとすると多くの場合、休学費用が発生します。近年、休学費用を数万円程度の低額に抑えようとしている大学も散見されますが、一部においてはいまだ通常の学費の半額以上を徴収している大学もあります。そこ費用負担が、休学を考えている大学生にとって大きなハードルになっています。
今回、私が提唱している「ボランティア休学制度」とは、被災地において6ヶ月程度以上の長期ボランティアに従事する大学生は「ボランティア休学」とし、休学費用を免除するという制度です。これによって志はあるものの、費用負担が困難でボランティアを行うことができない学生も被災地で中長期的なボランティアを行うことができるようになります。
そもそも高額な休学費用については、本当にそれほどに費用が必要なのか社会的非難を受ける事例も散見されます。そのような状況のなかで、特に高額な休学費用を定めている大学においては、是非とも「ボランティア休学制度」の導入をお願いしたいと思っています。
この「ボランティア休学制度」はある意味において、ギャップイヤー*3としての意義もあり、且つ正課の講義との連携を考えればサービスラーニングの視点においても有効だと考えています。どなたか大学関係者の方がおられたら、ご一緒に「ボランティア休学制度」の普及をお手伝いいただけませんか。
理事長 能島 裕介(nojima@brainhumanity.or.jp)

株式会社出藍社の松崎光弘氏のご協力でボランティア休学に関する企画書ができあがりました。是非、皆さま、ご覧下さい。
「ボランティア休学制度」企画書(PowerPointデータ・402KB)

平成7年に文部省(現・文部科学省)が「平成7年度我が国の文教施策」において下記のような記載をしています。
「(3) 阪神・淡路大震災に多くの学生がボランティアとして活躍したことから、全国の大学、短期大学、高等専門学校に対し、学生が被災地域におけるボランティア活動に安心して参加できるように、修学上の配慮などボランティアに参加しやすい条件作り等について協力を要請した。」
平成7年我が国の文教施策」文部省
つまり阪神・淡路大震災に際して、文部省は被災地でボランティア活動をする大学生等に対して修学上の配慮を要請しています。今回の震災においてもさらに踏み込んだ措置を行うことは決して不可能ではないと考えています。

*1:阪神・淡路大震災の際のボランティア数の推移は兵庫県のホームページに掲載されています。http://web.pref.hyogo.jp/contents/000036198.pdf

*2:文部科学省学校基本調査 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2010/08/05/1296403_3.pdf

*3:ギャップイヤーとは大学入学前や大学院入学前に一定期間の入学猶予期間を付与し、ボランティアや海外留学等の活動を行うための期間を設ける制度。英国におけるギャップイヤーは有名でいくつかのホームページ等でも紹介されています。参考 http://www.wasedajuku.com/wasemaga/unipro-note/2008/06/post_135.html