傘を持たない人達は
突然の雨に見舞われる。
電車に乗っている途中、大粒の雨が車体に当たって跳ね返る音が聞こえてきた。
これはまずいな…と思いながらも、降りる時には都合よく止んでくれるのではないかと淡い期待を寄せて電車に揺られていた。
そんなことより、考えたいことが色々とあったのだが、
目の前のやるべきことが気になって、中々思考に集中できない。
案の定、改札を出ても大雨は降り続いている。
確かに、事務所を出るときは、暗雲が立ち込めていた。
それでも、自分は雨には濡れないだろうと高を括っていたのだ。
いつもこうだ。そんな諦めとともに、雨の中に踏み出す。
大粒の雨と一緒に、なぜ傘を持ってないんだと憐れむような視線まで降り注いでくるような気がする。
それを跳ね除けるように少し笑って、これはまずいな…と呟く。
だが、もちろん、なんの効果もなく、容赦なく雨に打たれるだけである。
さっきまで、何も持っていなかった人達が、何故みんな傘を持っているのかといつも不思議に思う。
なぜ傘を持ってないんだと聞かれれば、雨に打たれることよりも、
使わない傘を持っていることのほうが嫌だからだと主張しよう。
そんなどこで使うかもわからない言い訳を考えながら、
今日もいつも通りの場所に少しの変化を求めて向かうのです。
こまい